Shared Decision Making

患者さんと医療者がいっしょに決める医療:
シェアード·ディシジョン·
メイキング(共同意思決定)

遺伝子とは
GENE THERAPY
監修
 京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻
健康情報学分野 教授 中山 健夫 先生

患者さんと医療者が
いっしょに決める医療:
シェアード·ディシジョン·メイキング
(共同意思決定)

SDMを円滑に行うための
情報収集

SDMで重要な、
患者さん側の病気の知識

これまでご説明した通り、SDMでは医師・医療者並みの知識は不要ですが、全てを医療者に任せるわけでもありません。医療者の説明がある程度理解できるレベルまで知識をつけておくと、デメリットも解消できます。また、事前に情報を得て考えることで、理解が深まり、医療者に希望を伝えやすくなります。
そのため、SDMでは病気とその治療に関する情報収集が必要です。

信頼できる
医療情報の収集方法

信頼のおける情報を発信している、代表的なサイトや図書館のコーナーをご紹介します。
ビギナー向けの情報から、医療者並みの知識がほしい場合など、さまざまな状況があると思いますが、ここでは以下3つのマークで分けています。参考にしてみてください。

初めて情報収集される方
少し詳しく知りたい方
医療者並みに知りたい方

近隣の図書館

図書館には病気に関する一般向けの本が配架されていることが多いです。手に取りやすい内容も多いので、何冊か試し読みをした後に、読みやすいものを選んでみるよいでしょう。
なお、医学は日々進んでいます。発行年を確かめて、本の内容は発行年までの情報だと捉えておき、それ以後の情報を医療者に聞くのもコツです。

医学系学会のウェブサイト
「一般の方々向け情報ページ」

医学系学会の多くは、一般の方々向けに病気の情報を発信しており、わかりやすい表現で書かれているページもあります。家やスマートフォンで確認できる点もメリット。病名等で検索した後に、学会の一般向けページが候補に挙がってきたら、一度確認してみてください。

患者会に参加/SNSにアクセス

医療情報は、サイトや本を読まないと集められないわけではありません。
患者会に参加することで、同じ境遇の方やそのご家族が、最新情報を持っていることがあります。治療を受けた感想等を聞く機会も得られるでしょう。最近は、SNSを介して患者さんやその周囲の方々が情報交換する機会も増えています。
ただし、同じ病気で同じ治療等を受けても、その効果/副作用は一人ひとり異なることを踏まえて情報を集めてください。情報の真偽に悩んだら、医療者に聞いてみると良いでしょう。

大きめの図書館・病院にある
医療情報コーナー

医療情報コーナーには、一般の方向けの本や資料、専門書が置いてあります。
大きめの図書館だと、一般の方向けの本も専門書も同じ施設で読むことができるので、とても便利です。

厚生労働省や自治体、関連団体の
ウェブサイト

厚生労働省は国民の健康を守る役割を担う中央省庁の一つで、健康に関するトピックや病気の予防・治療等に関する情報発信を積極的に行っています。医療にかかる費用に関しても、厚生労働省が各種制度の政策を主導しています(医療費について)。
https://www.mhlw.go.jp/index.html
また、地方自治体や国・地方自治体の関連団体も、それぞれ健康や病気にまつわる役立つ情報を出しています。
例えば、国立がん研究センターは「がん情報サービス」というウェブサイトで、がんに関する情報を一般の方々にもわかりやすい言葉で、網羅的に発信しています。
https://ganjoho.jp/public/index.html

医学系学会 診療ガイドライン

医学系学会の多くは、医療者向けに診療ガイドラインを作成しています。日本国内における各疾患のガイドラインは「Mindsガイドラインライブラリ」で検索して読めるようになっています。
https://minds.jcqhc.or.jp/

大学にある医学図書館

詳しい医学情報を探したい場合は、専門書籍が多い大学病院の医学図書館がお勧めです。
なお、入室に事前登録等が必要な場合があります(一般の方々が入室禁止の場合もあります)。
大学の医学図書館のウェブサイトで入室方法を確かめましょう。

文献探索

無料で使える中で代表的なウェブサイトは、Google ScholarとPubmedです。
Google Scholarは、日本語で文献を検索することができます。文献検索なので、専門的な内容が候補に挙がってきます。
https://scholar.google.co.jp/
Pubmedは、米国国立衛生研究所 (National Institutes of Health;NIH)が運営する文献検索サイトです。世界中の医学論文を検索できるのがメリットです。ただし、英語のサイトなので日本語で読みたい場合はGoogle翻訳等を使わないといけません。一般の方々だと、ハードルは高めです。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/

「(正しい)健康情報を入手し、理解し、活用する能力」のことを、ヘルスリテラシーと呼びます。
病気の治療は、ご自身のからだ、ひいては人生にかかわることです。少し大変かもしれませんが、自ら学ぶ意識をもち、病気や治療のことについてヘルスリテラシーを高めてみてください。
そして、どういう人生を歩みたいか、言葉にできる(意見が言える)ようにしておくと、SDMの意義が高まります。

参考)

  • 中山 健夫, 藤本 修平編. 実践シェアード・ディシジョン・メイキング 改題改訂第2版. 2024, 日本医事新報社
  • 大竹 文雄, 平井 啓.医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者. 2018, 東洋経済新報社
  • Epstein RM, et al. JAMA 2004; 291(19): 2359-2366.
  • Yahanda AT, Mozersky J. AMA J Ethics 2020; 22(5): E416-422.
  • Waddell A, et al. Implement Sci 2021; 16(1): 74.
  • 野原 理子. 働く女性の心とからだの応援サイト 妊娠出産・母性健康管理サポート(厚生労働省・一般財団法人 女性労働協会). ヘルスリテラシーを高めよう.
    https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/colum/colum33.html [2025年5月14日アクセス]
  • 公益社団法人 東京都医師会.ヘルスリテラシー. https://www.tokyo.med.or.jp/healthliteracy [2025年5月14日アクセス]