用語解説
血友病
血を固めるための「血液凝固因子」が生まれつき不足または欠乏している病気。
出血すると血が止まるまでに時間がかかる。
第Ⅷ(はち)因子が不足または欠乏している「血友病A」と、第Ⅸ(きゅう)因子が不足または欠乏している「血友病B」がある。
ゲノム
すべての遺伝情報のこと。ヒトでは46本の染色体にある約30億塩基対の全体を指す。
「ゲノム(genome)」は、gene(遺伝子)と-ome(全体)を合体させた造語。
脂質ナノ粒子
脂質を主成分とする直径10nmから1000nm程度のナノ粒子。
mRNAやDNAなどを安定的に目的の場所へ送達するベクターとしての活用が注目されている。
脊髄性筋萎縮症(SMA)
運動神経の生存や機能維持にかかわるタンパク質を作るのに必要な遺伝子がない(または変異している)ことによって、運動神経の働きを保てなくなる病気。筋緊張低下、筋力低下、筋萎縮(筋肉がやせ細る)といった筋肉の変化があらわれる。
染色体
ヒストンというタンパク質にDNAが巻きついた棒状のかたまり。
ヒトのすべての細胞核には23対(計46本)の染色体がある。
ターナー症候群
発症するのは女性のみで、2本のX染色体のうち1本の全体または一部が欠失した状態で生まれてくる性染色体の異常。
多くの場合、低身長や卵巣機能低下などの特徴がみられる。
ダウン症(ダウン症候群)
染色体の突然変異によって起こり、通常、21番目の染色体が1本多くなっていることから「21トリソミー」とも呼ばれる。特性として、筋肉の緊張度が低く、多くの場合、発達に遅れがある。
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)
筋肉にかかわるタンパク質である「ジストロフィン」を作るのに必要な遺伝子の変異によって発症する病気。
筋肉が壊れやすくなり、徐々に筋力が低下する。
転写
DNAの中の必要な遺伝子の塩基配列をmRNAへコピーすること。
DNAの塩基配列をもとにタンパク質を作り出す過程の1つ。
プラスミド
細菌や酵母の細胞内にあり、染色体のDNAからは独立して複製を行うDNA分子の総称。
この性質を利用して遺伝子などを運ぶものとして改変したプラスミドを「プラスミドベクター」と呼ぶ。
翻訳
mRNAへコピーされた塩基配列をアミノ酸配列へ変換して、アミノ酸を順番につなげてタンパク質を作り出すこと。
レトロウイルスベクター
最初に実用化されたウイルスベクター。分裂が止まった細胞には導入できない。
レンチウイルスベクター
ウイルスベクターの1つで、分裂が止まった細胞にも導入できる。
導入した遺伝子は染色体に組み込まれるため、長期にわたり安定的に遺伝子の発現が期待できる。
AAVベクター
アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus:AAV)由来のベクター。
AAVは野生のままの状態で病原性がない。
複数の型があり、どこの細胞に遺伝子を届けたいかによって最適な型を使い分けることができる。
CAR-T療法
がんに対する遺伝子治療の方法の1つ。
患者さんの血液から免疫細胞の1つであるT細胞を取り出して、そこへがん細胞を攻撃するために設計された「CAR」の遺伝子を導入して、その細胞を投与する。
DNA
遺伝子をもつ本体となる物質。
4種類の塩基[ A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン) ]が並んでいる。
mRNA(メッセンジャーRNA)
DNAの塩基配列を細胞核の中で写し取ったもの。
あるタンパク質を作るときには、そのために必要な遺伝子の塩基配列だけをコピーしたmRNAが核の外へ持ち出される。
T細胞
白血球のうちのリンパ球の1つで、免疫に大きく関係している細胞。がん細胞を攻撃する働きがある。
胸腺(thymus)でつくられるため、頭文字を取ってT細胞と名付けられた。