What is gene therapy

遺伝子治療とは

遺伝子治療とは
GENE THERAPY
遺伝子治療の歴史

ウイルスベクターを
知る

「ウイルス」
「ウイルスベクター」
違いは?

ウイルスベクターの原型である野生のままのウイルスは、一般的に病原性を持つ場合が多いため、病原性に関連する遺伝子が取り除かれたものを使っています。また、ウイルスが増殖するための遺伝子も取り除かれているので、周りの細胞に感染して増えていくことはありません。なお、一部のがん治療用ウイルスの場合は、がん細胞の中でだけ増殖するように工夫されているものもあります(制限増殖型)。

ウイルスとウイルスベクターの違い

ウイルスとウイルスベクターの違いの図

ウイルスベクターは、ウイルスが細胞に
感染して
遺伝情報を送り込む能力を利用して、
治療用の遺伝子を目的の場所(標的細胞)に
送り込むように
特定のウイルスを設計したもの

アデノ随伴ウイルス
(AAV)ベクター

の特徴は?

アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus:AAV)は、野生のままの状態で病原性のないウイルスです。似たような名前に「アデノウイルス」がありますが、AAVはアデノウイルスを培養するときに混入する小型のウイルスとして発見されたものです。

AAVベクターは、細胞分裂が起こりにくい細胞への遺伝子導入に適していて、これらの細胞では遺伝子発現が年単位にわたって長期間持続します。そのため用途が広く、遺伝性疾患を中心にAAVベクターを用いた遺伝子治療の開発が行われています。

遺伝子イラスト

AAVベクターを用いた
遺伝子治療

AAVベクターは、治療用の遺伝子と、それを包むタンパク質の殻でできています。

AAVベクターを用いた遺伝子治療では、1回の投与で目的の場所(標的細胞)に遺伝子を導入できます。導入した遺伝子をもとに、標的細胞の中で目的のタンパク質を作り出します。

治療用の遺伝子と、それを包むタンパク質の殻でできたAAVベクターの図

AAVベクターはなぜ特定の
細胞を

標的にできるのか?

AAVベクターは、タンパク質の殻の部分に複数の型があり、どこの細胞に遺伝子を届けたいかによって最適な型を使い分けることができます。

型の中には、届け先がより明確なものや、より広範なものがあります。

AAVベクターによる細胞への運搬イメージ

AAVベクターによる細胞への運搬イメージ

AAVベクターの型ごとに異なる、届けやすい場所

AAVベクターの型ごとに異なる、届けやすい場所の図

文献1,2)より作成

AAVベクターを用いた遺伝子治療のしくみ

治療用の遺伝子が目的の場所(標的細胞)の核の中に入ることで、目的のタンパク質が作られます。

治療用の遺伝子が目的の場所(標的細胞)の核の中に入ることで作られるタンパク質の図

POINT

ウイルスベクターは、ウイルスが細胞に
感染するメカニズムを利用して、
治療用の遺伝子を細胞内に送り込むように
特定のウイルスを設計したもの。

AAVベクターは、各々の臓器に適した型を使うことで、
様々な臓器に遺伝子導入可能。

出典)

  • Pipe S, et al. Mol Ther Methods Clin Dev. 2019; 15: 170–178
  • Zincarelli C, et al. Mol Ther2008; 16(6): 1073–1080
  • Wang D, et al. Nat Rev Druv Discov. 2019; 18(5): 358-378
  • Dreismann AK, et al. Immunol Rev. 2023; 313(1): 402-419

参考)

  • 石田 幸弘. 図解・最先端医療 がん遺伝子治療のことがわかる本. 2018, あさ出版
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター. 研究開発の俯瞰報告書 ライフサイエンス・臨床医学分野(2024年). 2025年3月 
    https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2024/FR/CRDS-FY2024-FR-05.pdf
  • 小澤敬也. ウイルス. 2003; 53(2): 163-170