遺伝子治療とは
遺伝子治療の種類
「遺伝子の補充」と
「ゲノム編集」
遺伝子治療の代表的な方法の1つは、正常に機能する遺伝子を補充・付加する方法です。
この方法では、遺伝子の変化がある部分(変異配列)はそのまま残して、補充した遺伝子によって目的のタンパク質を作り出せるようにします。この方法を使って、これまでに遺伝性疾患を中心にたくさんの治療開発が行われてきました。
それに対して、近年では変異配列そのものを変更する「ゲノム編集」の技術が相次いで開発されました。
ゲノム編集は、特定の遺伝子の機能を失わせたり、病気の原因になっている遺伝子の変化を修復したりすることができるため、新たな遺伝子治療法として実用化が期待されています。
海外ではすでにゲノム編集技術を用いた遺伝子治療薬が承認されています(2025年4月時点)。
遺伝子補充とゲノム編集の違い
がんに対する
遺伝子治療の例は?
がんに対する遺伝子治療の代表的な方法は、「CAR-T療法」と呼ばれるものです。
CAR-T療法とは、患者さんの血液から免疫細胞の1つであるを取り出して、そこへがん細胞を攻撃するために設計された「CAR」の遺伝子を導入して、その細胞を投与する方法です。
主に、白血病やリンパ腫などの血液がんを中心に用いられています。
ほかにも、ある種のウイルスが細胞を壊す性質を利用して、がん細胞だけを壊すようにウイルスを遺伝子改変した「がん治療用ウイルス」などが開発されています。(遺伝子治療の対象疾患)
遺伝子治療は法律上は『再生医療等製品』に含まれる
「遺伝子治療」と「再生医療」では医学的な意味は異なりますが、日本の法的枠組みでは遺伝子治療は『再生医療等製品』に含まれます。
臨床研究や自由診療として遺伝子治療を行う場合は「再生医療等安全性確保法」で規制され、この法律によって遺伝子治療の発展と患者さんの安全を両立させる体制が整備されています。
また、再生医療等製品の製造販売については薬機法※で規制されています。
再生医療
機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器に対して、細胞や人工的な材料を積極的に利用して、その機能の再生をはかるもの
『再生医療等製品』とは
人又は動物の細胞に培養等の加工を施したものであって、○身体の構造・機能の再建・修復・形成するもの○疾病の治療・予防を目的として使用するもの
- 遺伝子治療を目的として、人の細胞に導入して使用するもの
再生医療等安全性確保法(正式名称「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」)
再生医療等の迅速かつ安全な提供や普及の促進を図り、医療の質や保健衛生の向上に寄与することを目的とする法律で、2014年に施行された。医療機関での自由診療や臨床研究として実施される再生医療等を規制している。2025年5月に一部改正され、細胞加工物を用いない遺伝子治療(in vivo 遺伝子治療)も再生医療等技術としてこの法の対象に追加された。
※薬機法の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」