遺伝子治療とは
安全性について
遺伝子治療の
安全性の課題とその対策
遺伝子治療の研究では、これまで安全性が常に重要な課題となってきました。(遺伝子治療の歴史)
中でも、ウイルスベクターが染色体に組み込まれるかどうかが、安全性に大きく関わることがわかっています。
遺伝子が染色体に組み込まれ、長期的に働き続けますが、その分がん化のリスクがあります。実際、を使った治療で白血病が起きた例もあります。こうしたリスクを減らすため、安全性を高めたが使われるようになりましたが、それでもごくまれに骨髄異形成症候群が報告されています。
一方、は、染色体に組み込まれることが少なく、がん化のリスクは低いと考えられています。これまでヒトでAAVベクターが原因とされたがんの報告はありません。
また、遺伝子治療では、投与直後の免疫反応にも注意が必要です。1999年に米国のペンシルベニア大学でベクターの大量投与で自然免疫が強く反応し、重い副作用が起きた例がありました。
そのほか、投与後に獲得免疫が働いて肝臓に障害が出ることがありますが、多くの場合は一時的であり薬剤による治療が可能なものが大半です。
こうした遺伝子治療のリスクを減らすための研究が今も続いています。
遺伝子治療の
安全面への配慮
遺伝子治療薬は、承認前の臨床研究において安全性が確認されていますが、将来的に未知の副作用が報告される可能性はゼロではありません。
例えば、直接ウイルスベクターを患者さんに投与する体内法(in vivo遺伝子治療)では、生殖細胞への影響が生じないよう細心の注意が払われていますが、その可能性を完全に否定することは難しいとされています。
なお、卵子や精子といった生殖細胞への遺伝子導入は、次世代への影響を考慮して現在は禁止されています。